はじめに
鍼と手技療法(推拿手法)を組み合わせ、筋緊張を取り除き、関節の痛みを緩和してくれる先生がいました。そこで、初めて「経筋」を知りました。
みなさんの中には「経筋」という言葉を始めて聞いた方もいらっしゃると思い、ます。経筋については、黄帝内経の素問に経筋編というのがあり、そこに要略が記されていますが、要略ですから具体性がなく、また、関連する古代文献も少なく、日本に於いて広まることがなかった医法です。日本の鍼灸やマッサージの専門学校でも取り扱っていないからです。ところが中国では鍼灸や推拿の分野で研究され、各地の病院で推拿科の臨床に用いられているのです。
日本の東洋医学治療家の先生方の中でも特に鍼灸の先生方が研究し、書物も出版されていますが、それぞれに多少の見解のズレがあるように思います。それは、黄帝内経の日本語訳が難しいのと、中国と日本での気候風土、人の体質・性格・食などが異なっていること、鍼灸に於ける臨床数がまだまだ少ないのも要因だと考えます。
第Ⅰ章 経絡と経筋
1. 経 絡
経絡は、経脈と絡脈に分けられます。また、経脈は、十二経脈と奇経八脈に分けられます。

十二経脈には、肺経・大腸経・胃経・脾経・心経・小腸経・膀胱系・腎経・心包経・三焦経・胆経・肝経の十二経があります。これを十二正経とも言います。さらに十二経別・十二経筋・十二皮部も十二経脈の一種として分類されています。奇形八脈には、任脈・督脈・衝脈・帯脈・陰蹻脈・陽蹻脈・陰維脈・陽維脈の八脈があります。
肺経から肝経までの十二経と任脈・督脈をあわせて14あるので、十四経脈と言います。 絡脈には、十五絡脈と孫絡・浮絡・血絡があります。

それぞれの経絡についての詳細はここでは省きますが、表にまとめると次のようになります。
2. 経 筋
下の文章は、推拿全書からの抜粋です。ここでは、十二経筋について触れています。
中医学では気の通り道を経脈、気の出入り口を経穴(ツボ)と呼んでいることは みなさんご承知のことと思います。
経脈・経穴が体の表面・皮膚にあるのに対し、経筋は皮下を走行するとしています。その走行は、四肢の末端に始まり、関節部を走り、頭部や顔面部に到達しています。そして、経脈と同様に経筋も、手の三陰三陽と足の三陰三陽に分け、十二あります。
すなわち、手にも足にも太陽経筋・少陽経筋・陽明経筋・太陰経筋・厥陰経筋・ 少陰経筋がそれぞれあるのです。
ですから、分類上は十二経脈や経別と異なりますが、経筋が経路を規則的に循行 していることから考えると、十二経脈と同様な機能を持ち、特に筋に大きな影響を 与えることがわかります。
さて、筋は骨格に作用する筋もあれば、内臓や皮膚と関わる筋もあります。大きく分けると、経脈が内臓と密接に結びつくのに対して、経筋は、骨格・骨格筋・関 節・靱帯を通過しそれぞれに働きかけるのです。ですから、経脈上の経穴や、経筋 走行上の経穴を補完的に利用すると、様々な症状を改善することができるのです。
第Ⅱ章 経筋と流注の解釈
黄帝内経・霊枢・経筋編の原文をもとに、十二経筋について学んでいきましょう。
( )内は漢字の読みや意味、〔 〕は和訳する上での意味の補充を表します。
1. 足の太陽経筋
| 足太陽之筋。 足の太陽経筋。 起於足小指、上結於踝、邪上結於膝。 足の小指から始まり、上で踝(けん)に結び、悪い気は上に上がって膝に結びつく。 其下循足外側、結於踵、上循跟、結於膕。 下は足の外側を循し、踵(かかと)に結び、上は踵を循って、膕(ろう)に結ぶ。 其別者、結於踹外、上膕中内廉、与膕中并、上結於臀、上挟脊上項。 他の分岐は、踹(たたき)の外側に結び、上は膕(ろう)の中央に入り、内側の廉(れん)と膕(ろう)の中央で合流し、上は臀部に結び、上方で脊椎と項部を挟む。 其支者、別入結於舌本。 それらの支流は、舌の根元に入り分かれます。 其直者、結於枕骨、上頭下顔、結於鼻。 直者、枕骨に結ばれ、上は頭、下は顔、結び目は鼻にある。 其支者、為目上網、下結於頄。 その支流は、上で目の網膜に至り、下で頄(ずい)に結びつく。 其支者、従腋後外廉、結於肩髃。 その他の支流は、腋(えき)の後ろから外側の廉(れん)に従って、肩髃(けんぐう)に結びつく。 其支者、入腋下、上出缺盆、上結於完骨。 その他の支流は、腋の下に入り、上に出て缺盆(けつぼん)に至り、更に上で完骨(かんこつ)に結びつく。 其支者、出缺盆、邪上出於。 その他の支流は、缺盆から出て、悪い気が上に出ていく。 |
※以降翻訳はChatGPT 若干修正しています。

2. 足の少陽経筋
| 足少陽之筋。 足の少陽経筋 起於小指次指、上結外踝、上循脛外廉、結於膝外廉。 起源は小指の次の指からで、上で外踝に結び、上に脛の外側を循って、膝の外側に結びつく。 其支者、別起外輔骨、上走髀、前者結於伏兎之上、後者結於尻。 その支流は、外輔骨から分かれ、髀を走り、前者は伏兎の上に結び、後者は尻に結びつく。 其直者、上乗 季脇上、走腋前廉、系於膺乳、結於缺盆。 その直行の経絡は、季脇の上を通り、腋の前側を走り、膺乳に結び、缺盆に至る。 直者、上出腋、貫缺盆、出太陽之前、循耳後、上額角、交巓上、下走頷、上結於頄。 直行の経絡は、腋から出て、缺盆を貫き、太陽の前を通り、耳の後ろを循い、上額の角を通り、巓の上を交巡し、下顎を通って、上で頄に結びつく。 支者、結於眼外眥、為外維。 支経絡は、眼の外側の眥に結びつき、外側を維持する。 |
3. 手の陽明経筋
| 手陽明之筋。 手の陽明経筋 起於大指次指之端、結於腕、上循臂、上結於肘外、上臑、結於髃。 大指(親指)と次指(人差し指)の端から始まり、手首で結びます。上に向かって腕に沿って上り、肘の外側で結びます。さらに上に進み、上腕を経て肩の前側で結びます。 其支者、繞肩甲、挟脊。 その支筋は、肩甲骨を回り、脊椎の両側を挟みます。 直者、従肩髃、上頚。 直行する筋は、肩の前側から上り、首に至ります。 其支者、上頬、結於頄。 その支筋は、頬を通って上がり、鼻孔の横で結びます。 直者上出、手太陽之前、上左角、絡頭、下右頷。 直行する筋は、手太陽経の前を通り、左の額角に上がり、頭に絡みます。そして、右の顎に下ります。 |
4. 手の太陰経筋
| 手太陰之筋。 手の太陰経筋 起於大指之上、循指上行、結於魚後、行寸口外側、上循臂、結肘中、上臑内廉、 入腋下、出缺盆、結肩前髃、上結缺盆、下結胸裏、散貫賁、合賁下、抵季 脇。 親指の上から始まり、指に沿って上に行き、魚際(親指の付け根のふくらみ)の後ろで結びます。寸口(手首の外側)を通り、腕に沿って上に行き、肘の内側で結びます。さらに上に進み、上腕の内側を経て腋の下に入り、缺盆(鎖骨の上の窪み)から出て肩の前の肩髃(肩の前側のくぼみ)で結びます。さらに缺盆で結び、下に降りて胸の内側で結びます。そして、胸を貫いて賁(胃の上部)を通り、賁と合して下に行き、季肋(肋骨の下端)に達します。 |
5. 手の厥陰経筋
| 手心主之筋。 起於中指、与太陰之筋並行、結於肘内廉、上臂陰、結腋下、下散前後挟脇。 其支者、入腋、散胸中、結於賁。 手のひらの主要な筋 中指から始まり、太陰の筋と並行して走り、肘の内側で結びます。さらに上腕の内側を通り、脇の下で結ばれ、前後に広がりながら脇腹を挟みます。 その枝分かれした筋は、脇に入り、胸の中で広がり、最後に心窩部で結びます。 |
6. 手の厥陰経筋
| 手少陰之筋。 起於小指之内側、結於鋭骨、上結肘内廉、上入腋、交太陰、挟乳裏、結於胸中、循賁下繋於臍。 手少陰経筋 小指の内側から始まり、手首の突起部分で結ばれます。さらに肘の内側で結び、上方に進んで腋の下に入り、太陰の筋と交わります。その後、乳房の裏側を挟んで胸の中心で結ばれ、心窩部を下り、最終的に臍に繋がります。 |
7. 手の太陽経筋
| 手太陽之筋。 起於小指之上、結於腕、上循臂内廉、結於肘内鋭骨之後、弾之応小指之上、入結於腋下。 其支者、後走腋後廉、上繞肩胛、循頚、出走太陽之前、結於耳後完骨。其支者、入耳中。 直者、出耳上、下結於頷、上属目外眥。 手太陽経筋 小指の上から始まり、手首で結ばれます。さらに前腕の内側を沿って上り、肘の内側の突起の後ろで結ばれます。この部分を押すと、小指の上に反応があります。そして腋の下に結ばれます。 その枝分かれした筋は、後方に走り腋の後ろを通り、肩甲骨を巡って首に沿い、太陽の経絡の前を通って耳の後ろの完骨で結ばれます。さらにその枝分かれした筋は耳の中に入ります。 直行する筋は耳の上から出て、下りて顎に結び、上って目の外側の隅に属します。 |
8. 手の少陽経筋
| 手少陽之筋。 起於小指次指之端、結於腕。 上循臂、結於肘、上繞臑外廉、上肩走頚、合手太陽。 其支者、当曲頬、入繋舌本。 其支者、上曲牙、循耳前、属目外眥、上乗頷、結於角 手少陽経筋 薬指の端から始まり、手首で結ばれます。さらに前腕を沿って上り、肘で結ばれます。さらに外側を巡りながら上り、肩を通って首に走り、手太陽の筋と合流します。 その枝分かれした筋は、頬の曲がり角で分かれ、舌の根元に繋がります。 さらにもう一つの枝分かれした筋は、歯を曲がって上り、耳の前を沿い、目の外側の隅に属し、さらに顎を越えて上り、角(こめかみ)で結ばれます。 |
9. 足の陽明経筋
| 足陽明之筋。 起於中三指、結於上、邪外上加於輔骨、上結於膝外廉、直上結於髀枢、跗上循脇、属脊。 其直者、上循骭、結於膝。 其支者、結於外輔骨、合少陽。 其直者、上循伏兎、上結於髀、聚於陰器、上腹而布、至缺盆而結、上頚、上挟口、合於頄、下結於鼻、上合於太陽。 太陽為目上網、陽明為目下網。 其支者、従頬結於耳前。 足陽明経筋 足の中指、薬指、人差し指から始まり、足の上で結ばれます。外側に斜めに上り、腓骨の外側を経て、膝の外側で結ばれます。さらに直進して大腿骨の付け根で結ばれ、足の背を通り、脇腹を経て、脊椎に属します。 その直行する筋は、脛を沿って上り、膝で結ばれます。 その枝分かれする筋は、外側の腓骨で結ばれ、少陽の筋と合流します。 その直行する筋は、伏兎(大腿部の前面)を上り、大腿部で結ばれ、陰部に集まり、腹部を上って広がり、鎖骨の上で結ばれます。さらに上って首に至り、口を挟んで、頬で合流し、鼻で結ばれ、上って太陽の筋と合流します。 太陽は目の上の網のように広がり、陽明は目の下の網のように広がります。 その枝分かれする筋は、頬から耳の前で結ばれます。 |
10. 足の太陰経筋
| 足太陰之筋。 起於大指之端内側、上結於内踝。 其直者、結於膝内輔骨、上循陰股、結於髀、聚於陰器。 上腹、結於臍、循腹裏、結於肋、散於胸中。 其内者、著於脊。 足太陰経筋 足の親指の内側の端から始まり、内くるぶしで結ばれます。 その直行する筋は、膝の内側の脛骨で結ばれ、さらに内腿を上り、大腿部で結ばれ、陰部に集まります。 さらに腹部を上り、臍で結ばれ、腹部の内部を通り、肋骨で結ばれ、胸の中で広がります。 その内側の枝分かれは、脊椎に付着します。 |
11. 足の厥陰経筋
| 足厥陰之筋。 起於大指之上、上結於内踝之前、上循脛、上結内輔之下、上循陰股、 結於陰器、絡諸筋。 足厥陰経筋 足の親指の上から始まり、内くるぶしの前で結ばれます。さらに脛を上り、脛骨の下で結ばれます。続いて内腿を上り、陰部で結ばれ、そこから様々な筋に絡みます。 |
12. 足の少陰経筋
| 足少陰之筋。 起於小指之下、並足太陰之筋、邪走内踝之下、結於踵、与太陽之筋合、而上結於内輔之下、並太陰之筋、而上循陰股、結於陰器、循脊内挟膂、上至項、結於枕骨、与足太陽之筋合。 足少陰経筋 小指の下から始まり、足太陰の筋と並行して走ります。内くるぶしの下を斜めに走り、踵で結ばれ、足太陽の筋と合流します。そしてさらに上って脛骨の下で結ばれ、足太陰の筋と並行して走り、内腿を上り、陰部で結ばれます。続いて脊柱の内側を沿って上り、項に達し、最後に後頭骨で結ばれ、足太陽の筋と合流します。 |
第Ⅲ章 経筋と病状
1. 足の太陽経筋
| 足太陽之筋。 其病、小指支、跟腫痛、膕攣、脊反折、項筋急、肩不挙、腋支、缺盆中紐痛、不可左右揺。 足太陽経筋に関連する病は、以下の症状があります: ・小指の支障 ・踵の腫れと痛み ・膝の裏の筋肉の痙攣 ・背中が反り返る ・首の筋肉の緊張 ・肩が上がらない ・腋の支障 ・鎖骨の中央の痛み ・左右に揺れ動かせない これらの症状は、足太陽の経絡に沿った筋肉や関節の問題を示しています。 |
2. 足の少陽経筋
| 足少陽之筋。 其病、小指次指支転筋、引膝外転筋、膝不可屈伸、膕筋急、前引髀、後引尻、即上乗季脇痛、上引缺盆、膺乳、頚維筋急、従左之右、右目不開、上過右角、並脈而行、左絡於右、故傷左角、右足不用、命曰維筋相交。 ・足少陽経筋に関連する病は、以下の症状があります: ・小指次指(薬指)の支障と筋肉の転位 ・膝の外側の筋肉の引きつり ・膝が曲げ伸ばしできない ・膝の裏の筋肉の緊張 ・前方に引っ張られる大腿部 ・後方に引っ張られる尻 ・季肋部(胸の下部)の痛み ・鎖骨上部、胸、乳房の痛み ・首の筋肉の緊張 ・左から右への引きつり ・右目が開かない ・右側の頭の角を超えて脈に沿って行き、左側が右側に絡む ・左側の頭の角が損傷すると、右足が使えなくなる これらの症状は、足少陽の経絡に沿った筋肉や関節の問題を示しています。この状態を「維筋相交」と呼びます。 |
3. 手の陽明経筋
| 手陽明之筋。 其病、当所過者、支痛及転筋、肩不挙、頚不可左右視。 手陽明経筋に関連する病は、以下の症状があります: ・経絡の通るところの支障や痛み、筋肉の転位 ・肩が上がらない ・首が左右に動かせない これらの症状は、手陽明の経絡に沿った筋肉や関節の問題を示しています。 |
4. 手の太陰経筋
| 手太陰之筋 其病、当所過者支転筋痛、其成息賁、脇急、吐血。 手太陰経筋に関連する病は、以下の症状があります: ・経絡の通るところの支障や筋肉の転位による痛み ・胸部の緊張による呼吸困難 ・脇の緊張 ・吐血 これらの症状は、手太陰の経絡に沿った筋肉や内臓の問題を示しています。 |
5. 手の厥陰経筋
| 手心主之筋 其病、当所過者支転筋、前及胸痛息賁。 ・手心経筋に関連する病は、以下の症状があります: ・経絡の通るところの支障や筋肉の転位 ・前腕や胸の痛み ・胸部の緊張による呼吸困難 これらの症状は、手心主の経絡に沿った筋肉や内臓の問題を示しています。 |
6. 手の少陰経筋
| 手少陰之筋 其病、内急、心承伏梁、下為肘網。其病当所過者、支転筋、筋痛。 手少陰経筋に関連する病は、以下の症状があります: ・内部の緊張 ・心臓部の緊張と圧迫感 ・肘のあたりの筋肉の緊張と痛み ・経絡の通るところの支障や筋肉の転位、筋痛 これらの症状は、手少陰の経絡に沿った筋肉や内臓の問題を示しています。 |
7. 手の太陽経筋
| 手太陽之筋 其病、小指支、肘内鋭骨後廉痛、循臂陰、 入腋下、腋下痛、腋後廉痛、 繞肩胛引頚而痛、応耳中鳴痛引頷、瞑目良久乃得視。 頚筋急、則為筋瘻頚腫。 手太陽経筋に関連する病は、以下の症状があります: ・小指の支障 ・肘内側の鋭骨後部の痛み ・前腕の内側を通る痛み ・腋の下の痛み ・腋の後ろの痛み ・肩甲骨を巡り、首に引きつる痛み ・耳の中の鳴りや痛みが顎に引きつる ・目を閉じてしばらくしてからやっと視力が回復する ・首の筋肉の緊張 ・筋瘻や首の腫れ これらの症状は、手太陽の経絡に沿った筋肉や神経の問題を示しています。 |
8. 手の少陽経筋
| 手少陽之筋 其病、当所過者、即支転筋、舌巻。 手少陽経筋に関連する病は、以下の症状があります: ・経絡の通るところの支障や筋肉の転位 ・舌の巻き込み これらの症状は、手少陽の経絡に沿った筋肉や神経の問題を示しています。 |
9. 足の陽明経筋
| 足陽明之筋。 其病、足中指支、脛転筋、脚跳堅、伏兎転筋、髀前腫、潰疝、腹筋急、引缺盆及頬、卒口僻。急者目不合、熱則筋縦、目不開。 頬筋有寒則急、引頬移口。有熱則筋弛縦、緩不勝収、故僻。 治之以馬膏、膏其急者。以白酒和桂、以塗其緩者。以桑鉤、鉤之。 即以生桑炭置之坎中、高下以坐等、以膏熨急頬、且飲美酒、美炙食。噉不飲酒者、自強也。為之三拊而已。 足陽明経筋に関連する病は、以下の症状があります: ・足の中指の支障 ・脛の筋肉の転位 ・脚の跳ねるような動きや硬直 ・伏兎(大腿部前面)の筋肉の転位 ・大腿前部の腫れ ・潰瘍のような疝痛 ・腹部の筋肉の緊張 ・鎖骨や頬への引きつり ・急性の場合、目が閉じられない ・熱があると筋肉が緩み、目が開かない ・頬の筋肉が寒冷で緊張し、頬が引きつって口が歪む ・熱があると筋肉が弛緩し、収縮力が弱くなり、口が歪む 治療法は以下の通りです: ・緊張している筋肉には馬膏(馬の脂)を使用する ・弛緩している筋肉には白酒と桂を混ぜたものを塗る ・桑鉤を使用する ・生の桑炭を坎(くぼみ)の中に置き、高さを調整して座る ・膏薬を用いて急な頬を温める ・美酒を飲み、美味しい焼き肉を食べる。酒を飲まない人は、自分を強く保つためこれを三回叩くだけで良い これらの治療法は、足陽明の経絡に沿った筋肉や神経の問題を和らげるためのものです。 |
10. 足の太陰経筋
| 足太陰之筋。 其病、足大指支、内踝痛、転筋痛、膝内輔骨痛、陰股引脾而痛、陰器紐痛、下引臍与両脇痛、引膺中脊内痛。 足太陰経筋に関連する病は、以下の症状があります: ・足の親指の支障 ・内くるぶしの痛み ・筋肉の転位による痛み ・膝の内側の脛骨の痛み ・内腿が脾に引きつる痛み ・陰部の痛み ・下方に引っ張られる臍や両脇の痛み ・胸部中央から脊柱内側にかけての痛み これらの症状は、足太陰の経絡に沿った筋肉や関節の問題を示しています。 |
11. 足の厥陰経筋
| 足厥陰之筋。 其病、足大指支、内踝之前痛、内輔痛、陰股痛、転筋、陰器不用、傷於内則不起、傷於寒則陰縮入、傷於熱則縦挺不収。 足厥陰経筋に関連する病は、以下の症状があります: ・足の親指の支障 ・内くるぶしの前の痛み ・内側の脛骨の痛み ・内腿の痛み ・筋肉の転位 ・陰部の機能障害 ・内部の損傷による勃起不全 ・寒さによる陰茎の縮み ・熱による陰茎の弛緩し収まらない状態 これらの症状は、足厥陰の経絡に沿った筋肉や内臓の問題を示しています。 |
12. 足の少陰経筋
| 足少陰之筋。 其病、足下転筋、及所過而結者皆痛及転筋、病在此者、主癇及痙、在外者不能俛、在内者不能仰。 故陽病者腰反折、不能俛。陰病者、不能仰。 足の少陰経筋の病について: 足の裏のけいれんや、経過する部位での結び目のような痛み、およびけいれんが起こります。この経筋に病がある場合は、てんかんや痙攣を引き起こします。外側に病がある場合は、前屈ができず、内側に病がある場合は、後屈ができません。 従って、陽の病がある場合は、腰が反り返って前屈ができず、陰の病がある場合は、後屈ができません。 |
第Ⅳ章 経筋手技療法と推拿療法
1. 経筋手技療法
通常みられる疲労性の筋肉の凝り、あるいは張りや痛み、筋が硬いなどというの は殆ど経筋の異常です。経筋を弛緩することによって、肩凝りや腰痛などの症状が 緩和され、体が軽く感じるようになります。
鍼灸では経穴(つぼ)を刺激して治療を行ないますが、鍼灸師の資格を持たない 方は、手技療法や理学療法で対応します。手技療法では推拿(すいな)手法を用い ます。理学療法(家庭物理療法)では、主に低周波治療器を用います。
このように、種々の療法(施術)を経筋に用いるので、経筋療法と言います。 手技だけで経筋にアプローチすることを経筋手技療法と言います。
マッサージの手技では、体重をかけるため施術者の親指など手の一部を酷使し、 腱鞘や関節・筋肉を痛めることもあります。また、腰を痛めることもあります。こ のため、長く働くことができないという声も聞こえてきます。
整体の手技は、体重移動と手足の各部を使って行うために、施術者の関節や筋を 痛めることがありません。整体手技のなかでも特に推拿捏法は体重をかけたり大き な力を必要とせず、従来のマッサージにない生理学にもとずいた安全で無理のない 手技なのです。このことは「マッサージや指圧」と「整体」の手技の大きな違いの 一つです。
2. 推拿捏法
(1) 推拿の歴史
推拿の起源は中国大陸における人間の歴史と共に始まりました。推拿が医学的な 治療法に発展していった年代をはっきり特定することはできませんが、今から30 00年以上前、殷の時代(紀元前1751~1050年)には、すでに初歩的な推 拿の治療が始まっていたことが、遺跡の象形文字によって明らかになっています。
推拿が治療法として盛んに行われるようになったのは、春秋戦国時代(紀元前7 22~221年)頃と言われています。秦から漢の時代(紀元前221~紀元後2 00年)になると、推拿はさらに普及し、その記録がはっきりと文書に記録される ようになりました。現存する中国最古の医学書である「黄帝内経・素門」の中にも、 推拿療法について書かれています。この頃に、「黄帝岐伯按摩十巻」という推拿の 本が書かれたようですが、戦火によって消失し、現存していません。
魏の時代(220~265年)になると、皇帝のための病院に按摩科が設けられ、 唐の時代(618~907年)になると、「太医署」と呼ばれる中医師を養成する 学校ができました。太医署は、①医科、②鍼科、③推拿科、④祝由科(精神・心理) の4科から成り、この時代は整形外科や整骨も推拿科に含まれていました。
日本にはこの頃、「按摩」が伝来したと言われます。701年に、日本最初の法 律である「大宝律令」が出来ましたが、その中に按摩の記述があります。
宋、金、元の時代(960~1368年)には、推拿は婦人科の治療にも応用さ れ、明の時代(1368~1644年)には、小児科治療にも用いられました。
(2) 現代医療における推拿
新中国建国後、中国政府は中国の伝統医学を尊重し、積極的に中医師を育成する 政策を始めました。それは、西洋医学と中医学の医師が交流し、相互の良い面を取 り入れ、全体として医学を進歩させようという「中西医結合」と呼ばれる政策でし た。各地の中医学院に鍼灸・推拿科が設立され、西洋医学の医師は推拿療法を勉強 し、中医師は西洋医学を学ぶようになりました。両者が互いに研究・協力し、推拿 の手法を開発することも試みられ、推拿は急速に進歩しました。
このような積極的な試みが功を奏して、いまだかつてないほど推拿の研究が盛ん になり、新しい手技が次々に開発されただけでなく、頚椎病、椎間板ヘルニアの治 療に推拿が用いられるなど、治療の適応範囲も拡大してきました。
例えば、画期的なものの代表は推拿麻酔です。これは点穴による麻酔で、主に歯 科で抜歯に用いられてますが、患者にはほどんど痛みを感じさせず、抜歯ができるため、麻酔薬を注射するのと変わらない効果をあげ、医学界の注目を集めているのです。
推拿は、正式には「推拿学」、または「推拿療法」と呼ばれ、中国の各中医学院では推拿学が正式の名称として使われています。
推拿という呼称は、読んで字の如く「推法」と「拿法」という手法から生まれた 名前です。推拿のそれぞれの漢字の部首には手が含まれるように、推拿は基本的に 手技だけで病気を治す治療法なのです。
手技だけで行うために、手法の選択が推拿の治療には重要なポイントとなります。 その症状に適合した手法を選べるかどうかが、効果を生み出すかどうかの分かれ目 になります。
また、さらに大切なことは、手法の操作順序、いわゆる手順です。手順が適切で なければ、効果も半減してしまいます。 もう1つ大切なことは、症状に応じた経脈(経穴や経筋)の選択です。もちろん、 手法や経脈経穴を選ぶ際に、間違った選択をしないためには、四診法を中心にした 適切な診断が必要です。正確な症状の把握が必要です。また施術にたずさわる人の 正気、いわゆる未病の発見や症状を緩和させようとする意欲や気力、そして技術の熟練によっても施術効果は大きく変わります。
(3) 推拿の手法
推拿の手法には次のようなものがあります。
推法、拿法、按法、摩法、揉法、圧法、捏法(捏脊法)、擦法、搓法、滾法、
抖法、振法、揺法、抜伸法、一指禅法、十字托法、抹法、扳法、搯法、撥法、
捶法、拍法、叩法、撃法、弾法、屈法
第Ⅴ章 推拿捏法
捏法とは、拇指と示指(写真左)、または拇指・示指・中指で、あるいは拇指と他の四指(写真中)を用いて、経穴や患部の皮膚や筋肉をつまむ手技です。
全身の皮膚組織に適用し、肩凝り・神経痛・栄養不良などに効果があります。


- 捏法は、拿法と似ていますが、拿法より弱い力で行います。
- 捏法の中でも、督脈に行う「捏脊法」(写真下)は十二経脈へと気を注ぎ、全身の筋や五臓五腑に良い影響を与えます。

第Ⅵ章 経筋捏法
1. 経筋と解剖学でいう筋
- 頚部から腋下部にかけても足の太陽経節が流注していまが、この走行と完全に一致する筋肉はわかりません。
- 背面の肩峰部から肩甲骨下面は広背筋と関連しています。
- 内眼角から頭部、後頭部、後頚部、脊柱起立筋にそった部分は経脈の走行と同じです。
- 臀筋は、足の太陽経筋より足の少陽経筋が関連しています。
- 下肢後面は経脈と走行が同じです。
- 足の外果付近の走行は、胆経筋と一部重なります。
- 下肢後面の大腿二頭筋の緊張、坐骨神経痛などには太陽経筋が関与します。
- 下肢後面のひきつり、つっぱり、痛みを訴える場合は、足の太陽経筋の異常 があります。
- 足の太陽経筋の関連経穴としては、通谷、束骨、京骨等が重要です。中でも 京骨から束骨までの第5中足骨の外側面に部分的に圧痛の生じる場所がありま す。注意深く触診して、反応の強い経穴を探索することが大切です。
2. 太陽経筋の例

足太陽経筋は、
- 足の小指に起こり(至陰)ます。
- 上って果(躁)に結びます。
- 斜めに上りて膝に結びます。
- その下は足外側を循り(通谷・束骨・京骨・金門・申脈・僕参・崑崙)、踵に結びます。
- 上って、跟(こん=きびす、かかと)を循り、膕(かく・きゃく=ひかがみ、膝の後ろ)に結び(附陽、飛揚、承山、承筋、合陽、委中)、その別なるものは、こむらの外に結び(飛陽) ます。
- 膕中と併せて、膝窩の内廉を上り(委陽・浮・陰門)、上二りて尻(殿)に結びます(会 陽・上 ・次 ・中 ・下 ・白環兪)。
- 上りて脊を挟み、項(うなじ)に上ります。(陶 道・大椎・天柱・玉枕)。
- その支なるものは別れて入りて舌元に結びます。

- その直なるものは、枕骨に結びます
- 頭を上り、顔を下り、鼻に結びます。
- その支なるものは、目の上網に行きます。
- 下りて (頬骨)に結びます。
- その支は腋の後外廉より肩骨禺に結びます。
- その支は、腋下に入り、上って缺盆に出ます。
- 上って完骨に結びます。
- その支は、缺盆を出て、斜めに上って(頬骨)に出でます。

※ 鍼灸の臨床により、仙腸関節に流注する という報告もあります。

第Ⅶ章 経筋捏法の実際
1. 経筋捏法の効果
経筋捏法は、中国の伝統的な手技療法である「推拿」の中の「捏法」を用いて経 脈・絡脈や経筋に作用させる医術です。
捏法はおもに皮膚を刺激する療法です。皮膚は人体とそれを取り巻く環境が接する部分です。皮膚は神経受容器のネットワークを通じて環境の変化を人体に伝える と同時に、人体内部の環境を外部に反映するものです。経筋捏法は上方向へ皮膚を 引き上げるという方法で、皮膚を通じて生体の制御機序を活発化します。内臓や各 器官の機能を促進させ、体の防衛能力と回復能力を発揮させ、人体のバランスを取るための有効な手技療法です。
① 経筋捏法は老化を遅らせる
皮膚には多くの末梢神経、毛細血管、皮脂腺と汗腺があります。弾力とつやのあ る皮膚は、若さと活力にあふれていて、皮膚の状態が老化の程度を見る一つの目安 となります。経筋捏法は優しく皮膚を刺激し、老化した皮膚の細胞を取り除き、新 陳代謝を良くすることによって、皮膚の弾力性を強化します。これは、皮膚に一定 の刺激を与えることにより発生したエネルギーが、皮膚の血管に作用した結果です。
また、皮膚の毛細血管の血液循環を促進し、血行を良くして、皮膚に第二の心臓 としての作用をもたらします。整膚のこの二つの作用が、皮膚の血液量を増やし、 皮膚自体の栄養を改善して細胞を活性化させます。このため皮膚の老化を遅らせる ことができ、美容効果も得られます。
② 経筋捏法は心地よい刺激で病理的な悪性刺激を改善する
経筋捏法は実質的に、皮膚の表面に物理的な刺激を与えます。神経の反射理論に よれば、このような外からの刺激は、必ず体内に規律的反応を引き起こします。体の内外に疾病因子の影響があると、体の一部に異常があらわれ、受容器を刺激して中枢神経に衝動が送られます。この病理的衝動は、中枢神経で病理的興奮を生み、反射器官に消極反応を生み出させます。この消極反応は再び中枢に送られ、悪循環を形成し、体の状況は悪化の一途(慢性症状)をたどります。
経筋捏法は穏やかな良性刺激を繰り返し与えることによって、それを中枢に伝え、病理的興奮に取って替わって、興奮を弱めたり取り除いたりします。
経筋捏法は病気の治療と同時に、中枢神経系統の安定性を高めることができます。
そのため質の良い睡眠を促進し、神経衰弱の治療や自律神経の調整にも効果があります。
③ 経筋捏法は皮膚の感受機能を高める
皮膚の受容器は末梢神経から構成されており、体内外からのすべての刺激は、神経に伝達されます。
受容器が受けた刺激は、一定の強度を越えないと知覚されません。この臨界強度を「閾値(いきち)」と言います。長く経筋捏法を行っていると、皮膚の受容器の適応性が高くなり、刺激に対する反応の閾値も高くなってきます。そのため痛みなどの病理的な不快な刺激は感じなくなります。例えば、熱い湯に入るのが好きな人の皮膚は、普通の人に比べて高い温度に耐えられます。
また、人体の伸展側(外側)の皮膚は、屈曲側(内側)の皮膚よりも、はるかに痛みを感じることが少ないのです。
この他、経筋捏法を行う時の適度な痛みは、皮膚の痛覚受容器を興奮させ、脊髄を通って大脳皮質に伝わり、脳下垂体から痛みを止めるホルモンが分泌されます。これが繰り返されることにより、だんだん痛みが軽減されていくのです。
④ 経筋捏法は血液循環を促進する
経筋捏法と按摩や指圧マッサージとの根本的な違いは、経筋捏法が皮膚を持ち上げる時の力の方向が上向き(体の表面から離れる方向)であるというところにあります。按摩や指圧マッサージは、筋や皮膚を押したり圧したりしますから、ここに大きな違いがあります。
経筋捏法を行った部位の皮下脂肪と筋肉の組織の隙間は大きくなり、それにより組織の血管が拡張し、血液循環が促進されます。また、引っぱられた組織が元に戻る瞬間も、ポンプ作用で血行がよくなります。
組織のエネルギーが消耗されずに新陳代謝が良くなるので、運動ができない状態の人や寝たきりの人にも有効で、疲労回復、痛みの除去と同時に組織の耐性を高めることができます。
⑤ 経筋捏法は神経の反射機能を活発にする
神経系の活動の基本は反射で、反射の基礎は反射弓です。人体内の一切の活動は、反射弓を通して実現されます。いわゆる反射とは、体内外の刺激が受容器に作用して、反射弓を通して実現される生理過程のことです。これは、求心性神経路・中枢神経・遠心性神経路からなります。
知覚神経の末端である受容器のうち、最も大切なのは皮膚です。皮膚に刺激を与えれば、必ず体の内部に反応が現れます。これを繰り返すことにより、神経反射が活発になります。
⑥ 経筋捏法は脊髄神経を調整する
脊髄に出入りしている末梢神経を脊髄神経と言いますが、経筋捏法により脊髄に良い刺激を与えれば、脊髄への刺激を通して、脊髄の神経細胞、周囲の組織、経筋(骨格筋や靱帯)にも良い影響を与えることができます。これは、老化の防止にも役立つのです。
⑦ 経筋捏法は内臓を調整する
自律神経には、交感神経と副交感神経の二つあります。ある臓器が病気になると、神経の伝達により、皮膚の関連部分に痛み(関連痛や放散痛)が出てきます。そのため逆に、皮膚に触れることにより、どこの臓器に障害があるか知ることができます。経筋捏法は皮膚を通して刺激を内臓に伝え、それにより病気を治したり、病気を予防したりすることを目的としています。
⑧ 経筋捏法には一定の心理的治療効果がある
心の病気は精神的治療でなければ治すことができません。心理的な要因で病気になったときは、心理療法が最も効果的です。経筋捏法は有効な物理的療法であると同時に心理的な効果も期待できます。これは、経筋捏法を受けている間、リラックスした安らぎの時間が持て、リラックスすることにより精神状態は良い方向に向かいます。
⑨ 経筋捏法は全身療法で万病に効果がある
経筋捏法の対象は病気そのものではなく人間です。 薬や手術など病気の因子に直接対処する治療法は、病気が重い時には有効ですが、このような方法にはリスクがつきものです。これに対して経筋捏法は、病気の因子に直接働きかけるのではなく、体質を改善して病気に対する低抗力を増加させ、病気にかかりにくい体を作ることを目的としています。このため、ひとつの病気を治すだけではなく、全身の状態を改善することができるのです。全体のことを考えて、ひとつの病気を治療するというのが経筋捏法の特徴です。これが「異病同治」とも「多病同治」とも言われる東洋医学の神髄です。
さらに、経筋捏法は体の内部(五臓五腑)を調整し、体の機能を高めることを目的としていますので、身体に優しい全身療法でもあり、万病にも優しく効果を出すのです。
2. 経筋捏法の特徴
① 経筋捏法は安全で覚えやすい手技である
経筋捏法の手技は皮膚を持ち上げるのが中心です。力の方向が体を離れるので、力の入れすぎによる不注意での骨折や脱臼などの医療事故が起こることはありません。経筋捏法は、身体を圧迫しないので安全な治療法であり健康法なのです。また、常にリラックスした状態で施術を受けられるのも経筋捏法の特徴で、強い力がなくても行える上に、技術も簡単なので、老若男女にかかわらず、一定の時間勉強しさえすれば習得できる手技です。また、ご夫婦、ご兄弟、職場仲間などの間で、お互いに簡単に行うことができます。つまり、経筋捏法は治療、健康維持増進、健康管理などの面において非常に役立つ手技なのです。
② 施術の種類
経筋捏法には三つの施術法があります。
| A全身の施術 B局部の施術 C経穴の施術 |
疲労回復や病気の改善・予防、健康維持増進のために施術する場合は全身の施術
を行います。子供や高齢者には局部の施術を行います。慢性病の方には経穴の施術を行います。
| 補法 | 瀉法 | |
| ●手技の刺激の強さ | 軽い刺激 | 強い刺激 |
| ●気血の運行方向 | 求心性(心臓に向かう) | 離心性(心臓から離れる) |
| ●手技の速さ | やや速く | ゆっくり |
| ●経絡の循環方向 | 順方向 | 逆方向 |
経筋捏法の手技は、軽い刺激、向心性、リズムよく、順方向の経絡の特徴を備えています。このため経筋捏法は「補」の手技なのです。
これは、人体の調節機能や各器官・組織の潜在能力を引き出し、自己防衛能力と自己修復能力(自然治癒力)を充分発揮させ、人体の陰陽・虚実・五臓五腑のバランスを保つことを目的とした有効な治療法であり健康法なのです。
「補法」は特に、高齢者、幼児、病気で体の弱っている人、慢性痛や慢性病に苦しんでいる方々に有効な手技療法なのです
3. 経筋捏法の手順
経絡は、十二経脈、奇経八脈、十五絡脈、十二経別などと数えきれない孫絡などで構成されています。
十二経脈は、手三陽(陽明大腸経、少陽三焦経、太陽小腸経)、手三陰(太陰肺経、厥陰心包経、手少陰心経)、足三陽(陽明胃経、少陽胆経、太陽膀胱経)、足三陰(太陰脾経、蕨陰肝経、少陰腎経)で成り立ち、これらの経脈は一定の循環経路を持ち、「経」と「経」とで密接に連絡をとっています。

陰陽では、上が陽、下が陰です。左が陽、右が陰です。よって、経脈の巡行を基調としながらも「陽から陰へ」の通り、全身経筋捏法の手順は、「上から下」、「左から右」という方向性を持って施術します。
4. 経筋捏法の実技
(1) 関節部位への施術

(2) 全身経筋捏法の手順

